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デジタル素材のマーケットプレイスで圧倒的地位を確立した「ピクスタ」の強み、ビジネスモデルを徹底解剖

PIXTA(ピクスタ)という企業、サイトをご存知だろうか。クリエイターの方や普段コンテンツ作りをされている方であれば、利用をされているかもしれない日本最大の画像素材サイトだ。

今回は、後発ながらデジタル素材市場で成長を続け、新たなサービスも複数展開してる同社の成長の秘訣や立ち上げの経緯、それぞれのビジネスモデルなどを紐解いていきたい。

ピクスタとは

ここでは、ピクスタの会社の事業内容と簡単な沿革、更に立ち上げ初期のストーリーについてみていきたい。

会社概要

ピクスタは、プロ・アマチュア問わず誰もが自ら制作した写真・イラスト・動画などをピクスタのサイト上で売買できるデジタル素材のマーケットプレイスで、現代表で創業者である古俣大介氏が2005年8月に設立し、2015年9月にマザーズ市場へ上場を果たしている。

社員数は連結111名、単体93名(2020年9月末時点)で、2020年12月期の業績予想は売上高約26億、経常利益はマイナス0.3億で売上高に関しては堅調に推移している。「PIXTA」が有名ではあるが、その他にも出張撮影プラットフォーム「fotowa」芸術家支援プラットフォーム「mecelo」の運営も手がけている。

立ち上げストーリー

古俣氏は大学4年生だった2000年に、現在セントレックス市場に上場しているガイアックスという会社のインターンに参加した後、すぐに社員となり半年後には子会社の役員まで上り詰めたが、同年12月に退職して独立の準備を始めた。10ヵ月後には有限会社を設立し、最初の事業はあまりうまくいかなかったそうだが、その後2003年の12月から本格的にEC事業をスタート。

初年度は5000万、2年目は1億の売上と順調な滑り出しだったが、改めて事業を起こす目的を考え、個人のお金儲けのためではなく、社会に新たな価値を提供し評価されるために会社を大きくする必要があるという考えに至り、ECの会社は兄に譲り、2005年に一人でオンボード(現ピクスタ)を立ち上げたのである。

古俣自身、コードは書けなかったため、当初は独学でプログラミングを学んだが最終的には大学の友人にお願いしている。古俣氏曰く、「プログラミングができないデメリットは初動段階のみで遅かれ早かれあまり関係なくなるが、大事なことは自分でプログラミングができなくとも、最低限のシステム構造や大枠の開発手順などを知っておくことだ」としてる。


業績

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

上の図はピクスタのこれまでの業績推移と直近の業績である。ご覧の通り、創業から現在まで堅調な売上高の推移であるが、直近の累計第3四半期段階の売上高は約19億(前年同期比−5.6%)、営業利益はマイナス1,300万(前年同期比−92.1%)であった。

主力であるPIXTA事業はコロナウイルスによる影響もあり、売上高は若干落ち込み、営業利益に関してはオフィス移転費用や人員拡大による人件費の増加からマイナス数値となっている。また、セグメントの詳細に関しては以下項目でお伝えするが、同社の売り上げ比率としては主力のPIXTA事業が全体の90%以上占めており、残りの10%弱をfotowa事業とSnapmart事業が同程度の割合で占めている状況である。

セグメント業績

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

先ほどお伝えしたように同社には大きく3つの事業があり、ここでは残り2つの事業についてそれぞれの業績をみていく。

fotowa事業に関して、上の図は売上数値ではなく、出張撮影マッチングサービスの撮影件数の数値である。2Qはコロナの影響で落ち込んだものの、6月以降は盛り返し3Qは前年同期比プラス42.5%と成長しており、3Qの売上高は約2,600万(前年同期比+33.1%)であった。4Qに売り上げが偏るのは、七五三などの撮影ニーズの高いライフイベントが集中するためである。

Snapmart事業に関しては、上の図の通りマーケットプレイスとオンデマンド撮影の2つの収益モデルがある。事業の詳細は後ほどご紹介するが、マーケットプレイスはPIXTAと同じモデルであり、オンデマンド撮影は購買者側からの依頼に対して写真を提供しているモデルである。業績は、マーケットプレイスの売上高が1,300万(前年同期比+65.5%)、オンデマンド撮影の売上高が、1,200万(前年同期比−24.3%)であった。
 

具体的な事業内容とビジネスモデル

参照元:有価証券報告書

先ほど簡単にご紹介したように、同社には大きく3つの事業があり、上の図は全体のビジネスモデルを表したものであるが、以下では更に具体的に各事業のサービス内容とビジネスモデルをみていく。

PIXTA事業

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

PIXTA事業は、インターネットサイト上でクリエイターから素材を投稿してもらい、その素材を法人個人問わず購入者に提供している。購入された金額と同社が定めているコミッション率に応じた「獲得クレジット」というものをクリエイターに付与し、それが一定基準額超えた時点でクリエイターが換金申請ができる仕組みである。

2021年1月時点で写真、イラスト、動画、音楽などの素材掲載数は5,830万点以上登録クリエイター会員数は、2012年時点で10万人を初めて突破して以来、2016年に20万人、そしてその約3年後の2019年7月のプレスリリース時点で30万人を突破

PIXTAは、素材のサイズに応じてS〜ベクターまで単品で購入するタイプと、月で利用できる素材数に応じた月々更新と年間更新のいわゆる定額制タイプの2種類のプランがある。また、素材に関しては事前に取り決められた使用許諾範囲内であれば、一度データを購入すれば何度でも使用可能なロイヤリティフリー・ライセンスで提供している。

fotowa事業

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

fotowaは2016年に開始した撮影してほしい人とフォトグラファーをつなぐ出張撮影プラットフォームである。利用者は写真テイストや得意ジャンル、口コミなどからイメージに合うカメラマンを予約できるのので、イメージ通りの写真撮影が可能となる。

また、撮影依頼者が安心してサービスを利用できるように、いくつか条件はあるが、仮に撮影した写真に満足できない場合には、全額返金保証ができる制度も設けている。サービスの利用方法や口コミなどより詳しい内容については、以下別の記事で取り上げているので興味のある方は一度確認してみてほしい。[blogcard_sc url=”https://mihoniti.com/fotowa/”]

市場環境

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

国内子供人口は減少傾向にあるが、それに反して子供写真館市場は成長を維持しており、年間撮影件数にすると200~300万件程度と想定されている。fotowa事業の2019年の年間撮影件数が約1万3,000件だったことを考えると、まだまだ事業拡大の余地は十分にあると思われる。

特に今後は、市場が700億以上あるとされる育児・出産分野を中心に強化を進め、更には結婚式、ペット、旅行などの領域まで拡げ、出張撮影といえば fotowaという状態を目指す計画である。

Snapmart事業

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

Snapmartは先ほどお伝えした2つの収益モデルがあり、ひとつはPIXTAと同様のマーケットプレイスだが提供している素材が異なり、もうひとつはSNS運用に適した写真を法人向けに提供するオンデマンド方式のモデルである。

具体的には、Snapmartは主に一般ユーザーがスマホで撮影した写真が中心で主にSNSで投稿されるような素材が多い。マーケットプレイスに関しては基本的に仕組みはPIXTAと同じで、扱っている素材がPIXTAが写真愛好家などハイアマチュア作家たちによる投稿が中心なのだ。両者は、その世界観に違いがあり単品と定額プランの形態は同じだが料金は異なる。

オンデマンド撮影は主に法人である写真の買い手側が必要に応じてほしい写真を依頼して購入するための仕組みだ。オンデマンドという言葉の、”ユーザの要求があった際に、その要求に応じてサービスを提供する事“という意味である。
 

特徴と優位性

国内においてピクスタの同業にあたる企業としては、アマナ、アフロ、Photolibraryなどがあるが、同社がここまで成長を続けているのかを、その違いと優位性をみていきたい。

環境の変化

まず、デジタル素材市場においてピクスタは後発であったが、アマナ、アフロは主にプロのクリエイターが撮った素材が中心であるのに対し、ピクスタはアマチュアの方が撮った素材も豊富にある。

一眼レフカメラの普及やスマホのカメラの性能が向上するなど、一般個人でも比較的クオリティの高い写真を撮ることができるようになったという環境の変化があった。古俣氏が同社を立ち上げたのも、一般個人の方が撮った写真を投稿しているサイトを見つけ、その写真のクオリティに驚いたことがきっかけとなっている。

ネットワーク外部性

環境の変化とそれに伴うニーズの変化を捉え、いち早くアマチュアの素材を豊富に集めSNSへの対応などをするなどを行った。その結果、「素材のコンテンツが充実→求める顧客が増加→投稿数の増大(=更なるコンテンツの充実)」という好循環が働き、ネットワーク外部性の効果が高まったと考えられる。

同様にネットワーク外部性の効果が高まったことで拡がったサービスとしては、お馴染みのLINEやメルカリなどが挙げられる。彼らも元々携帯でのメッセンジャー機能やPCでのオークションサイトなど似たようなサービスがあったなかでスマホの普及という環境変化のタイミングで地位を築いた会社である。

今後の成長戦略

参照元:2020年12月期第3四半期決算説明資料

今後は、写真やイラストなど以外にも様々な素材、そこに関わるクリエイターとそれを求める法人、個人を結びつける巨大なプラットフォームに向かう構想である。

PIXTA事業の戦略

主力のPIXTA事業では、主に販売戦略の部分で今現在単品購入の売上比率が高いため基本的にはフロー型モデルであるが、少しづつ売上構成比率が高まっている定額制のモデルを今後も更に強化する計画である。

昨今のSaaSモデルやそのニーズの高まりなどもあり、同社の収益的にもメリットが大きいため、今後も拡大が続くと考えられる。

fotowa事業の戦略

fotowa事業では、利用者がインターネット経由で来客するという流れに沿って、主に出産。育児のニューボーン領域でのSEO対策の強化、プロモーションの強化を図ることで、認知度・知名度の向上に取り組み計画である。

また、顧客とは決済までネットでのやり取りということで、今現在クレジットカードのみの対応だが、今後はより多様な決済ニーズに応えるために決済手段の充実化に取り組む計画である。

Snapmart事業の戦略

Snapmart事業に関して、マーケットプレイスでは、PIXTA事業と同様に定額プラン利用者の拡大が課題である。オンデマンドでは、2020年12月に同社プレスリリースがあったように、今後営業人員を増やし一定規模以上の法人を対象に企業のニーズを積極的に取る戦略だ。
 

総括

普段noteやブログなどをされている方であれば、コンテンツを作る際に出来るだけイメージにあった写真を探す際に一度は苦労した経験はないだろうか。私自身色々なサイトで有料のものから無料のものまで利用したことがあるが、やはり素材の量、質は有料サイトが圧倒的である。

コンテンツを普段から多く作られる企業あるいは個人でも、素材を探す時間や労力また著作権に関するリスクを考えれば、ひとつは有料サイトを利用しても十分なリターンがあると思っている。

今後ウェブサイトの数がますます増え、ネットでの購買活動が更に進む中で、各サイトのコンテンツは非常に重要な役割であることは自明の理であることから、ピクスタの今後の更なる成長に期待をしたい。

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